時間というブラックボックスに「構造」を与える
多くの企業にとって、人件費は最大の投資項目です。しかし、投資対象である「従業員の時間」が何に使われ、どう価値へ転換されているか――その解像度は驚くほど低いのが現実ではないでしょうか。
タイムスライスマネジメント™ は、この根源的課題に対し、具体的な「構造」と「プロセス」を提供する実践的フレームワークです。単なる精神論でも、ツール導入の号令でもなく、組織の時間管理能力そのものを段階的に引き上げることを目的としています。
そして、この強力なフレームワークのポテンシャルを誰もが最大限に引き出すために開発されたのが、アプリケーション 『Slice』 です。
フレームワークの基本構造
タイムスライスマネジメント™は、3つの基本要素で構成されています。
構成要素1:30分単位の「スライス」
全ての業務時間を、思考の最小単位である「30分」で区切って記録します。これは、人間の集中力のサイクルや記憶の仕組み(チャンキング)に基づいた、継続可能な最も合理的な粒度です。完璧な記録を目指すのではなく、まずは「大枠」で時間の使い方を捉えることから始めます。
構成要素2:時間の「仕訳」- 最初のタグ付け
会計の本質は、使ったお金に「交通費」「交際費」といった勘定科目という「タグ」を付け、その流れに意味と構造を与える行為です。
タイムスライスマネジメント™は、この思想を「時間」に適用します。記録された各スライスに対し、まず最も重要で根源的なタグを付けます。それが「P/C(Profit/Cost)」による仕訳です。
- P (Profit): 未来の売上に直接つながる、価値創造型の活動。
- C (Cost): 事業運営に不可欠だが、直接利益を生まない、維持管理型の活動。
このタグ付けは、単なる分類ではありません。一つ一つの時間に対し「これは投資だったのか、コストだったのか」という価値判断を行う、経営的な行為そのものです。
構成要素3:「分類」の設計 – 多次元のタグで解像度を上げる
P/Cという最初のタグ付けに加え、さらに多次元のタグを設定することで、時間の解像度を飛躍的に高めます。それが「What(何を)」「Who(誰と)」「Why(なぜ)」といった分類軸の設計です。
これらの「分類」は、組織独自の業務内容に合わせて設計され、チーム全員が使う「時間の共通言語(共通タグ)」となります。この共通タグがあることで、初めて組織内のコミュニケーションの質が向上し、データに基づいた議論が可能になるのです。
導入・運用ステップ:組織能力を育むプロセス
急がず、着実に。 段階的な定着が成功の鍵です。
ステップ 1:現状の可視化(1〜3 日目)
- 30 分スライスで「何をしたか」を自由に記録。
- 先入観なしの“生データ”を集めるフェーズ。
ステップ 2:分類の導入と定着(4〜9 日目)
- 集めたデータをもとに、マネージャー中心で共通タグを設計。
- 記録とフィードバックを繰り返し、誰もが迷わず入力できる状態へ。
- フェーズ最後に現状データを共有し、2 週間後の理想グラフ(数値目標)を設定。
ステップ 3:改善サイクルの実行(10 日目以降)
- 予実管理:始業前に予定スライス、終業時に実績スライスを入力。
- 乖離分析:予定との差を分析し、割り込み業務や非効率会議などの根本原因を特定。
- 改善グラフとの対話:10 営業日ごとに目標と実績を比較し、次のゴールを再設定。
- このサイクルを回し続けることで、組織の生産性は着実に向上します。
フレームワークを加速させるエンジン ── 『Slice』
タイムスライスマネジメント™は紙とペンでも実践可能ですが、導入と継続を劇的に容易にするのがアプリケーション『Slice』です。
- 効率的なタグ付け
- 直感的 UI で 30 分スライス・P/C・各種タグをサクサク入力。
- タグの標準化
- 組織で定義した共通タグをサジェストし、表記揺れを防止。
- リアルタイム可視化
- 個人・チームの時間配分を瞬時に集計。改善グラフとの比較が容易。
- AI 活用の基盤構築
- 構造化された良質データが AI エージェントを賢くし、将来的な高度分析・予測を可能に。
結論
タイムスライスマネジメント™という羅針盤とSlice という高速エンジン。二つがそろって初めて、組織は時間という最重要経営資源の解像度を飛躍的に高め、データドリブンな持続的成長基盤を築くことができます。
